玉屋ブログ

貸し借りのお話。

2019/05/23

小5のとき、通学路の交差点を渡っていたとき、右折車が

横断中の俺めがけて突っ込んできた。

催眠術にかかったように体が動かず突っ込んでくる車を
呆然と見ていたら
(あらぬ方向を見ているドライバーの顔まではっきり見えた)
後ろから突き飛ばされ、俺は難を逃れた。

が俺を突き飛ばしてくれた大学生は車に跳ね飛ばされた。

泣きながら近所の家に駆け込んで救急車と警察を呼んでもらい

自分は警察の事故処理係に出来る限り状況説明をした。

後日、家に警察から電話があり大学生の入院先を教えられ

母親と見舞いに行って御礼を言った。

中学1年のとき父親の仕事の都合で同県内の市外
(というか、山の中)へと引っ越した俺は

そこで先生となっていた件の大学生と再会した。

お互いに驚き再開を喜びつつ、3年間面倒を見てもらって

(なんせ田舎の分校なので、先生はずっと同じなのだ)

俺は中学を卒業し、高校進学と供に市内に戻った。

地元の教育大学に進学した俺が教育実習先の小学校へ向かう

途中の交差点で

自分の前を渡っている小学生の女の子に右折車が突っ込もう

としているのをみた。

今度はドライバーが携帯電話で喋りながら運転しているのが

見えた。

スローモーションみたいに流れる情景に
「ウソだろ・・・」
と思いつつとっさに女の子を突き飛ばしたら、自分が跳ね飛ば
された。

コンクリートの地面に横たわって、泣いてる女の子を見ながら

あのとき先生もこんな景色を見たのかな・・・

とか考えつつ意識を失った。

入院先に、俺が助けた女の子の親が見舞いにやって来た。

彼女の親は中学時代の恩師であり、俺の命の恩人そのヒトだった。

「これで貸りは返せましたね」と俺が言うと

「バカ・・・最初から、借りも貸しも無いよ」

と先生は言った。

ベットの周りのカーテンを閉めて、俺たち二人、黙って泣いた。
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彼女の遺言のお話。

2019/05/22

大学時代の同級生仲間で、1年の時から付き合ってるカップルがいました。

仲良しで、でも二人だけの世界を作ってるわけじゃなく、みんなと仲良くしてました。

私は女の方の一番の友達だったんだけど、彼氏とも仲良くしてたわけです。

大学を卒業しても交流があったし、何度か会った時も二人は一緒で

本当に仲良しだなァって思ってたわけです。最後に3人で会った時

「結婚しないの?」って聞いたら、「うん、まあね…。」とお茶を濁す様な返事。

その後、彼女が病気だった事がわかって入院して

彼は仕事の行きと帰りに欠かさず彼女のお見舞いしてました。

私も何度も行きました。

病名は水頭症(脳腫瘍の一種?)でした。

結局、治療も空しく、彼女はこの世の人ではなくなってしまったんです…

私たちが25歳の夏でした。

お通夜と告別式の手伝いに行った時、喪服を着てチョコンと座ってタバコを吸っている

彼に、 「…、なんて言って良いか、わかんないよ…。」と泣きながら私は言いました。

すると彼は、

「そうだね。でも、これでアイツが他の誰の物にもなら無い事が決まったしね。」

と、ニッコリと笑顔で言いました。私は耐えられなくて号泣。

それでも彼は殆ど無表情で、まあまあと私の肩を抱いてくれました。

出棺の時、「これが最後のお別れです。」って式場の人が言った途端

彼は耐え切れなくなって、崩れるようにボロボロと涙を流し始めました。

子どもの様に、大きな声をあげて。

その姿を見て、またしても私は号泣でした。

数日後、少し落ち着いてから、彼と会いました。見て欲しい物があるって。

それは彼女が昏睡して意識を失う前に書いた、最後の手紙だったんです。
彼が、
「俺はね、アイツを励まそうと思って、『結婚しようよ。』って言ったんだ。

そうしたら、アイツは『病気が治ったら結婚届けを出そうね。』って言ってた。

俺は『間違いなく治るからさ』って励まして、役所に行って結婚届け貰ってきた。

でも俺は本当はもう無理だって知ってたんだ。でも励ましたかったんだ。

アイツが死んだ日に、アイツのお父さんが黙ってこれを渡してくれた。」

と言って、私に手紙を渡してくれました。

中には見慣れた彼女の筆跡でこう書いてありました。

「うそつき。でも凄く嬉しかった。本当にそうなったらなって何度も思いました。
私にはあなたの代わりはもう見つからない。だから私はずっとあなたの物。
だけどあなたの代わりはいるんだよ。気にしないで良いからね。
落ち込んだあなたを、きっと一番励ましてくれるだろう人が誰なのかは、わかってるから。
その人にこの手紙を見せてあげて下さい。本当にありがとうございました。じゃあね!」
って。

私はその手紙を見て、人前なのにまたしてもボロボロに号泣してしまって。

彼が、「それは多分、君の事なんじゃないか?」って。

うん。私は前から彼が好きだった。

あれからずーっと引きずってる彼と仲良くして4年。

今度結婚します。
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命に嫌われている。- カンザキイオリ

2019/05/14

命に嫌われている。- カンザキイオリ

「死にたいなんて言うなよ。
諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
実際自分は死んでもよくて
周りが死んだら悲しくて
「それが嫌だから」
っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
誰かを嫌うこともファッションで
それでも「平和に生きよう」
なんて素敵なことでしょう。
画面の先では誰かが死んで
それを嘆いて誰かが歌って
それに感化された少年が
ナイフを持って走った。
僕らは命に嫌われている。
価値観もエゴも押し付けて
いつも誰かを殺したい歌を
簡単に電波で流した。
僕らは命に嫌われている。
軽々しく死にたいだとか
軽々しく命を見てる
僕らは命に嫌われている。
お金がないので今日も一日中惰眠を謳歌する
生きる意味なんて見出せず、
無駄を自覚して息をする。
寂しいなんて言葉で
この傷が表せていいものか
そんな意地ばかり抱え
今日も一人ベッドに眠る
少年だった僕たちは
いつか青年に変わってく。
年老いていつか
枯れ葉のように誰にも知られず朽ちていく。
不死身の身体を手に入れて、
一生死なずに生きていく。
そんなSFを妄想してる
自分が死んでもどうでもよくて
それでも周りに生きて欲しくて
矛盾を抱えて生きてくなんて
怒られてしまう。
「正しいものは正しくいなさい。」
「死にたくないなら生きていなさい。」
悲しくなるならそれでもいいなら
ずっと一人で笑えよ。
僕らは命に嫌われている。
幸福の意味すらわからず、
産まれた環境ばかり憎んで
簡単に過去ばかり呪う。
僕らは命に嫌われている。
さよならばかりが好きすぎて
本当の別れなど知らない
僕らは命に嫌われている。
幸福も別れも愛情も友情も
滑稽な夢の戯れで全部カネで買える代物。
明日死んでしまうかもしれない。
すべて無駄になるかもしれない。
朝も夜も春も秋も
変わらず誰かがどこかで死ぬ。
夢も明日も何もいらない。
君が生きていたならそれでいい。
そうだ。本当はそういうことが歌いたい。
命に嫌われている。
結局いつかは死んでいく。
君だって僕だって
いつかは枯れ葉にように朽ちてく。
それでも僕らは必死に生きて
命を必死に抱えて生きて
殺してあがいて笑って抱えて
生きて、生きて、
生きて、生きて、生きろ。

感想。。。

いずれ朽ちる命。
だからこそ、かけがえのないものであり
軽々しく考えてはいけないもの。
自分が考えている以上に、大切で価値のある命。
その命の灯が消えないように
生きて、生きて、生きろ!
と背中を押しているのでしょう。

心に刺さる歌詞の連続でした。
人間や世の中に
“どうしても生まれてしまう汚い部分”
が歌われているはずなのに、この歌を聴くと、力強く生きていこうという
想いでいっぱいになります。
聴くたびに、心が浄化されたような気分
になるのは私だけじゃないはずです。
表面上ではなく、深部に刺さる。
そんな楽曲であったと思います。
命に嫌われている。/まふまふ

ごうちゃんのお話。

2019/04/18

母が24歳、父が26歳、自分が6歳の時に両親は離婚した。

母が若くして妊娠し、生まれた自分は望まれて生を受けた訳ではなかった。

母は別の男を作り、父は別の女を作り、両親は裁判で自分の親権をなすり付け合っていた。

それを見かねた母の弟、つまり自分の伯父は
「俺がこの子に愛を教える。
貴様らは最低だ。どこにでも行ってしまえ。二度とこの子の前に現れるな」

そう言い放って僕を引き取った。

こうして伯父と僕との共同生活が始まった。

幼い僕はまだ大人の事情を知る理解力がある訳がなく、突然消えた両親と、突然現れた

熊みたいなあんちゃんに戸惑いが隠せなかった。

ただ足りない頭ながらも、毎日いがみ合う両親と、二人に殴られる毎日で、いつか両親

は自分を捨てるだろうと薄々感じていた。

伯父は自分のことを伯父さんではなく『ごうちゃん』と呼べと僕に言って聞かせた。

多分、両親の居ない僕に伯父さんと呼ばせるのは酷だと思った、ごうちゃんなりの優しさ
だろう。

ごうちゃんは23歳で土木作業員。ボロいアパートで一人暮らし。

僕は最初はぎこちなかったものの、いつの間にかごうちゃんのことが大好きになっていた。

ごうちゃんとの毎日はとても楽しかった。

土木の軽トラで毎日幼稚園まで迎えに来てくれて、その足で夕飯の材料を買いに行った。

料理は天才的に下手くそで、不味いね不味いねと笑いながらも作った料理を平らげ、眠くなる

までプラモデルを作ったりして遊んだ。

休みの日になると朝から日が暮れるまでキャッチボールやサッカーを近所の子供達を交えて遊んだ。

運動するごうちゃんは、成人した男とは思えないほど大人気ないプレイをする。とにかく、容赦ないのだ。

悪いことをすると躊躇なく殴る。

でも、何か良いことをすると頭をガシガシ撫でて思い切り褒めてくれた。

自分がなぜこの環境に置かれているのかも忘れるくらい、ごうちゃんは僕に愛を、優しさを、喜びを与えて
くれた。

小学校の授業参観も母親達に混ざって、似合わないスーツで来てくれた。

遠足のお弁当も夜なべして作ってくれた。

今だにリュックの中でべちゃべちゃになったカレーは忘れられないよ(笑)。

高校で始めたラグビーの応援にもいつも来て、大事な試合前には丹念にマッサージしてくれた。

高校卒業して働くつもりだったのに、

「やりたいことがあるんだろう。糞ガキが家のことなんか心配すんな。俺はまだ若い」

そう言って服の専門学校に入れてくれた。

就職の内定が決まった時は、鼻水を垂らして泣いてくれた。

初めての給料で材料を買い、ごうちゃんにスーツを作った時は、初めておもちゃを買ってもらった

子供みたいにはしゃいでいた。

ごうちゃん、結婚式に着てくれたね。奥さんに長い間待たせてさ。俺のことなんて気にしないでさっさ

と結婚しちゃえばいいのにさ。

これからは俺ではなく自分と奥さんの幸せを大切にして欲しいと願ったのに。

神様なんて本当に居ない。

ごうちゃんは仕事の現場で突然倒れて即入院。2週間後に手術。

手術から1ヶ月後には呆気なく逝ってしまった。

今でも忘れられない。

死に際になり意識が失くなったごうちゃんに、僕は咄嗟に叫んだ。

「父さん!」

言った瞬間、自分に驚いた。

でも続けて何回も叫んだ。

父さん、父さん、父さん、父さん…。

ごうちゃんが倒れて一度も涙なんか出さなかったのに。

自分の口から溢れ出る父親への呼び掛けに涙が止まらなかった。

ごうちゃんは薄っすら目を開けて、意識を取り戻した。

そしてゆっくりと、震える腕で、僕の頭をガシガシと撫でた。

あんなに逞しかった手は枯れ枝のようになっていた。

でも誰よりもその手は温かかった。

そして静かに目を閉じて動かなくなった。

それっきり二度と目を覚まさなかった。

ごうちゃん、病室で紹介した女の子と結婚して子供が生まれたよ。男の子だよ。

ごうちゃんから一字もらったからね。

ごうちゃんに抱っこして欲しかった。

抱き締めて欲しかったよ。

お父さん、お父さん、お父さん…。俺のお父さん。俺のお父さん…。

あれから今日の命日まで何年も経ったのに涙が止まんないよ。

実の両親の顔なんか今は全く思い出せない。

お父さん、伝わったのかどうかも分からないし、面と向かって言ったのは一度きりだけどいいよね。

血の繋がりがなくてもあなたは私の父親であり、母親でもありました。

今度生まれ変わったら本当のあなたの子供として生まれたいと思うよ。

そうして何度でもあなたに頭を撫でられたい。

お父さん。

今、とても会いたいです。
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ばあちゃんのスイカのお話。

2019/04/11

昨年の夏に高知へ行った。

夏真っ盛りで走ってても頭がクラクラするくらいの炎天下。

R439の全線走破目指して2日目の午後、中村市に近いところまで辿り着いた。

辺りにはなにもない川べりの道端にビーチパラソル立てて、

一人の婆ちゃんがスイカとトマト売ってた。

オレは水を張った樽の中に浮かんでるスイカとトマトに魅かれてバイクを停め、

「おばあちゃんココで食べてもいいか?」と聞いた。

婆ちゃん笑って椅子を出してくれ、小さなスイカを四つに切ってくれた。

ほんのりと冷えていて、喉が渇いていたオレは二切れを一気に食った。

「トマトも食うか?」

そう薦められて歪な形の、それでも真っ赤に熟れたトマトを一つ頬張った。

「なあツトム」と婆ちゃんがオレに話しかけた。

「今日は学校休みなんか?」

オレは食いかけのトマトを握り締めたまま婆ちゃんの顔を見た。

ビーチパラソルの青い色の下で、婆ちゃんは優しそうに笑ってた。

「そいともこれからか? 学校は」

婆ちゃんがボケているのだと気づくまでに少し時間が必要だった。

「そうだよ、今日はこれから学校なんだよ」

そう答えると婆ちゃんは何度も何度も肯いて、

「ツトムはちいこい頃からよく勉強しちょったなぁ」と笑った。

「このオートバイはツトムんか?」

「気いつけんといかんぜよ、バアちゃん泣かさんちくれよ」

「今年は台風がよう来よっと西瓜みんな割れてしもうた」

婆ちゃんはオレの返事などお構いなしに独りで話し続けた。

高くて真っ青な空に、夏雲が飛んでいた。

青草の匂いのする風が、オレと婆ちゃんの座っているパラソルを時々揺らした。

なんにも音のしない本物の夏が、ただキラキラ輝いてた。

トマトの濃厚な味を感じながらツトムって誰だろうとオレは思った。

婆ちゃんの孫だろうか? それとも息子だろうか?

このトマトを食い終わるまでの間だけ、オレはツトムになった。

今年もまた夏がやってくる。

高知の西の川べりに、またあの婆ちゃんはスイカを売るのだろうか?

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プレゼントは空っぽの箱のお話。

2019/04/02

何年か前に友達から聞いた話です。

彼はクリスマスが近づいたとき、三才の娘が包装紙を何枚もむだにしたため

彼女をきびしく叱りました。

貧しい生活を送っていたのにその子はクリスマスプレゼントを包むための大切

な包装紙で箱を作ってクリスマスツリーの下に置いたのです。

叱られた娘はその箱を父親に渡しながら

「パパ、これはパパのためよ」

と言いました。

受け取った父親は箱を開けてみると中は空で、何も入っていませんでした。

父親は娘にたずねました。

「プレゼントは空っぽの箱だけかい?」

娘は目に一杯涙をため父親を見上げて言いました、

「パパ、空っぽではないの、たくさんの私のキッスを入れたの、

これは全部パパのためなの。」

父親はぼう然としました。そして、娘を抱き上げ、ゆるしを願いました。

それ以来、父親は娘からもらったその箱を大切に保管し、いつもベッド

のそばに置いていました。

そして、元気を失った時、その箱を開けて、

娘がどれ程大きな愛をもって自分のためにキッスを入れたかを思い出し、

大きな慰めを受けたのです。
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