離れて分かった母の愛のお話。
僕は、何かにつけて口うるさい母がイヤでしかたがありませんでした。それこそ、1から10まで干渉されているようで、早く独立して家を出て行くことばかり考えていました。
幸い、近くにちょうどいい部屋が開いたので、すぐに引っ越しました。
やっと、うるさい母から離れて暮らすことができ、解放された感じがしてうれしい毎日でした。
ところが、いざ自分で暮らすとなると、食事・洗濯・掃除などでアルバイトで疲れた身体にはこたえました。食事もコンビニで買った弁当やカップ麺で済ますことが多くなり、おまけに洗濯物もたたまずに部屋の隅や衣装ケースに丸めてつっこんでおくようになってしまいました。
そんなある時、自転車のカゴにおかずが置いてありました。母に違いありません。
アルバイトで疲れた身体に母の作った「肉ジャガ」の味には、とても有り難い気持ちがしました。何も手紙やメモもありませんでしたが嬉しい感がしました。
一緒にいる時は“口うるさいだけの母”と思っていましたが、そうではありませんでした。親としての優しい愛情だったのです。
それでも、実家に帰ると母に面と向かって何も言えず、ただ、黙ってあいた容器を台所に置くだけでした。母も何も言いません。
しかし、心の底ではとても感謝しています。