クッキーの味のお話。
私は小さい頃から家族が大好きでした。
一人っ子の私は家族からも親戚からも可愛がられていました。
私が5歳の時、妹が生まれました。一人っ子だった私はとても嬉しくてしかたありませんでした。
親戚も両親も、妹をかなり可愛がっていました。私の相手をする人も、それどころか私がいることさえ、分からなくなるほど、妹を可愛がっていました。
私はいつも一人ぼっちで、寂しく遊んでいました。 そのせいか、私はいつの間に家族が嫌いになっていました。 私が高校2年生になっても、妹への愛着は相変わらずで、家にいたくない私は友達と毎日毎日遊んでいました。
ある日めずらしく真っ直ぐ家に帰った私。頭痛と生理痛がひどかったのです。 玄関からは香ばしい香りが漂ってきました。
2階の自分の部屋に行こうと、階段を上がり始めたとき「おねぇちゃん」と妹の声がしました。 「は?」ただでさえ妹のことが好きでないのに、頭痛と生理痛でイライラしていた私。 「あのね…クッキー作ったんだけど…」
差し出されたクッキーを私は見つめた。
「食べてみて?」 妹は遠慮気味におずおずと差し出した。
「いらない。お腹空いてないから。」冷たく私は答えた。「で…でもっ」 しつこい妹にイライラしていた私はそのクッキーを床に投げつけました。
「あ!」「しつこい。」
2階へ上がり自分の部屋に飛び込みました。
その週の終わりの雨の日、私のケイタイに電話が入りました。「いまどこ!?」それは母からの電話。「は?」「今すぐ○○病院に来て!」それは妹が運ばれたと言う話でした。私はその時友達と遊んでいて、友達が帰ったら行けばいいと思い、2時間くらい遊んでいました。
?妹の病院に着き、病室のドアを開けると… 泣き崩れ今にも倒れそうな母。
母を支えている父。
そして…ベットに横たわり白い布を被った妹。
「…は?」 意味が分からなくて、恐る恐る白い布を剥がすと、青白い妹。 鼓動が大きく響いて座り込みました。 家に帰り、自分の部屋に入ると机の上にピンクのラッピングされた袋。 そしてカード。
そこには『お誕生日おめでとう!』と書かれていました。
リボンをゆっくり解くと、そこにはクッキーが入っていました。
それを見た瞬間涙が零れ落ちました。 一つ口の中に入れました。
「しょっぱい…味分かりずらいっての。」
鼻が詰まってわかりずらかったけど、しょっぱいのは涙のせいだってわかりました。 一回も祝ってあげなかった妹の誕生日。
なのに妹は忘れず、何回も何回も失敗しながら作ったクッキーの味は一生忘れることは無いでしょう。
私の誕生日が妹の命日。
ごめん…ごめんね。 どうしてあの時傷だらけになりながらも、一生懸命自転車を練習する君の背中を支えてあげなかったんだろう。
どうしてあの時いじめられて泣きじゃくる君を抱き寄せて「おねぇちゃんはいつも味方だからね」って言ってあげなかったんだろう。
どうして死の瞬間に手を握って「いっつもそばにいるからね」って言ってあげなかったんだろう。
ねぇ・・・こんなおねぇちゃんでごめんね。
なんにもしてあげなくてごめんね。
でもおねぇちゃんは、ずっとずっとそばにいるから。
背中を支えるから。
いじめっ子をこらしめるから。
手を握るから。
だから…
いつまでも おねぇちゃんの妹で いてくれるかな?