小さな封筒のお話。(再会)
次の日、
チホ姉ちゃんの姿はなかった。
「俺が母さんにチクったから…?」
と、心配になって、アイスも買わず、さっさと家に帰った。
当然、母さんは帰ってきてないので、病院に電話をかけてみた。
「今日、チホ姉ちゃん、おらんかったけど、どしたん?」
「んー、今日ねぇ、ちょっとお姉ちゃんは体を悪くしちょるんよ」
「大丈夫なん?」
「大丈夫よ。でも、お姉ちゃんと遊ぶのは、もうやめたらどうなの?」
「なして」
「なしてって、、、」
この日から、チホ姉ちゃんが外に出てくることはなかった。
夏休みが終わるぐらいに、
俺はチホ姉ちゃんのお見舞いに行くことにした。
母に連れられ、病室にいくと、とても痩せたチホ姉ちゃんがいた。
綺麗な黒髪も、今は何となくつややかさが消えていた。
チホ姉ちゃんは俺を見るなり、
大きい目を細くして、微笑んでくれた。
「珍しいお客さんね」
「体大丈夫?」
「大丈夫よ」
チホ姉ちゃんは、ベッドの机で何か手紙を書いていたのを、
俺から隠すように、裏にした。
「友達もみんな、チホ姉ちゃんが来なくなって寂しくなってさ」
ホントは俺が一番寂しかった。
「そっか。ごめんね。お姉ちゃん、体弱くて…」
「早く元気にならんといけんよ。待っちょる人がおるんやろ」
「そうね。元気にならんとね」
俺とチホ姉ちゃんは一日中、折り紙遊びやTVを見ながら過ごした。
次の日も、その次の日も、友達と遊ばずに、チホ姉ちゃんと過ごした。
夏休みが終わると、
平日の夕方か、日曜日しか、チホ姉ちゃんに会えなくなった。
チホ姉ちゃんの親にも会った。
弟ができたみたいね、と俺を可愛がってくれた。
母さんも、「お姉ちゃんができて良かったわねぇ」と言ってくれていた。
そんな日が、ずっと続くと思ってはいなかった。
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