小さな封筒のお話。(予期)
冬か、秋の終わりごろの土曜日だった思う。
俺は学校が終わるなり、すぐにチホ姉ちゃんに会いに行くのが日課だった。
いつも通り、いろんな話をしていると、
チホ姉ちゃんが口を押さえて、白いベッドを真っ赤にした。
吐血した。
チホ姉ちゃんは真っ赤に染まった手でナースコールを押し、
ベッドから転げ落ちた。
俺はどうすればいいのか分からなかった。
チホ姉ちゃん、チホ姉ちゃん、と泣き叫んでいたと思う。
すぐに看護婦がやってきて、色々と手当てをした。
俺は病室を追い出された。
廊下から、チホ姉ちゃんの血を吐く音、
うなる音、咳き込む音が聞こえて怖くなった俺は、泣きながら家に走って帰った。
家に帰るなり、部屋にとじこもって泣きまくった。
夕飯も食べず、泣いて泣いて泣きまくった。
泣き疲れて、いつの間にか寝ていた。
起きたのは4時20分(時計を見たのをめちゃくちゃ覚えている)。
まだ暗かったが、玄関から物音が聞こえて起きた。
どうやら母さんらしく、俺の部屋に向かってくる足音が聞こえる。
母さんが俺の部屋のドアを開けた。
俺が起きているのに気づいて、目をカッと開いた。
「千穂ちゃん、死んじゃったわ…」
予期していた言葉だった。
とはいえ、全身をつらぬく言葉であった。
俺は返す言葉もなく、ただ押黙っていた。
母さんは静かにドアを閉めた。
チホ姉ちゃんは、もういないんだ・・・
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