ふがしのお話。
もう、ずいぶんと前の話になるんだが。
昔から俺の家はおじいちゃん、おばあちゃんと言ったら、母方の方と決まっていた。
そんなだったから、父方のおじいちゃんはそんなに好きではなかった。
怖いイメージしかなかったしな。
そんなある日、俺は親父に連れられて父方のおじいちゃんの家に行った。
正直行きたくなかったのだが、なかば無理やりに連れてかれた。
おじいちゃんの家は、すごく狭かった。
物が沢山あって、その中に小さなコタツが置いてあった。
今思えば、おじいちゃんはあの頃からかなり具合が悪かったのだと思う。
つらそうにコタツに入っていた。
俺を見つけると、嬉しいらしく、はにかんでいたな・・・。
でも、俺はおじいちゃんが好きではなかったから、面倒くさいとしか思っていなかったと思う。
そんなおじいちゃんが咳き込みながら、俺にふがしを差し出した。
でも、俺はふがしが好きではないし、無理やり連れてこられたのでイラついていたから、
「要らない。」
と、言ってしまった。
おじいちゃんは困ったようにした後、
「美味しいんだけどなぁ・・・。」
と言って、残念そうにうつむいてしまった。
それから3ヶ月後、おじいちゃんは肺ガンで亡くなった。
突然だったし、あまり親しくなかったから涙はでなかった。
その後、おじいちゃんの家にもう一度行った。
その時、コタツの上にふがしが置いてあった。
俺はなんか涙があふれちゃって、ふがしを食った。
号泣しながら食った。
ごめんね、おじいちゃん。
ふがし、美味しいね・・・。
久しぶりに食ったふがしは、少ししょっぱかった。