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愛情のリレーのお話。

玉屋ブログ

もうずいぶん昔だけど俺が大学生の頃、母が突然入院した。

癌らしくて、余命宣告も受けたって母の口から直接聞いた。

あまりにもあっさり言うもんだから、最初は冗談かと。

芯の強い人で、だれからも好かれる自慢の母だった。

大学卒業して、就職して、それで給料もらえるようになったら母にやっと恩返しが少しずつできるようになるって、勉強も俺なりにがんばってた。

愛情を注いでくれた母にお礼がしたかった。

でも、俺が卒業する前にきっと母は死んでしまう。

いっぱい恩があるのに、何一つ返せない、きっとこのまま母が死んでしまったら俺は一生後悔する、ごめんって母の前で一度だけ大泣きした。

その時もあっけらかんとして俺にこう言った。

「あんた、どれだけお金持ちになるつもりか知らないけど、産んで育ててもらった恩をお母さんが生きてる間に返せるわけないでしょ。

お母さんもあんたのおばあちゃんとおじいちゃんが生きてる間に恩返しできたなんて思ってない。

あんたが健康に育ってくれた、それで半分恩返ししてもらった。

あとの半分は、いつかあんたに子供ができた時、その子に返してあげなさい。

お母さんは今やっとおばあちゃんとおじいちゃんに恩返しできたよ。」

そう母が言ってくれたとき、救われた気がした。

もう長くない母に、何かしてやりたいのに何もできないって毎日モヤモヤしてたから。

結局大学を卒業する前に母は死んでしまった。

今やっと一人前になって、結婚して、嫁が妊娠中です。

今年の冬には残りの半分、少しずつだけど返していけるようになる。

絶対に世界で一番幸せな子供にしてやろうって思う。

それは俺が母に愛されていたことの証で、

我が家に代々伝わってきた愛情のリレーなんだと思う。

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