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女房からのラブレターの話。

玉屋ブログ

昨年の十月、女房が胃潰瘍の手術の為に入院した。

後で分かったのだが、意を決しての入院だったようだ。

女房は手術室へ向かう直前、ベッドの枕の下から 一通の封書を私のポケットにねじ込み、寂しそうに笑っていたのが少し気にはなった。

手術は一時間足らずで終わったが、その間、待合室で先ほど渡された封書を開けてみた。

「お父さん!
私は潰瘍ではなく、癌だと思っています。
この先あまり長くは生きられないと思うので、今のうちに言っておきます。

四十年近く連れ添ってくれて有難う。

良妻だったとは思っていません。

我がままばかり言って迷惑のかけっ放しだったと自分でも思います。
でも、 あなたのお陰で、私は結構楽しい人生が送れました。
私が先に逝くことになりますが、『三途の川』は渡らずに、あなたが来るまでじっと待っています。

来た時には、他のいい女に目移りすることなく真っ先に私を探してください。

「来世でも夫婦として一緒に暮らしてあげますから・・・」

「なん じゃ!これは!遺書か?ラブレターか?」

思わず吹き出した。

術後、医師から告げられた。

『単なる潰瘍です。

三週間ぐらいで退院できるでしょう。』

その言葉を聞いて一安心すると同時に、あの、内弁慶な女房の本心の一端を図らずも垣間見たことで思わず苦笑した。

四~五日して病院に行くと手を出すので、「なんや!」と聞いたら、あの手紙を返せと言うのでした。

私は、「そんなもん、知らんで!」と言うと、背中をおもいきりたたかれました。

その力は、元気な時と同じぐらいの強さまで回復していました。rabure

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